DXビルドドライバー、ならびにDXハザードトリガーは今回の一番くじの商品に含まれません。
また、デフォルメフィギュアの台座として使用しているラバーコースターは別賞(C賞)になります。
2019年2月15日発売予定の「一番くじ 仮面ライダージオウ feat.平成レジェンドライダー vol.2」にて、最後のくじを引いた人がもらえるラストワン賞は、第21話にて仮面ライダービルド ラビットタンクハザードフォームが暴走するシーンを再現した「ハザードは止まらない仮面ライダービルド デフォルメフィギュア」。これを記念して、第21話の演出を担当した上堀内佳寿也監督にインタビューを敢行! あの印象的なシーンに関する様々なことを含め、『仮面ライダービルド』に対する熱い想いなどを語ってもらった。
- 取材:
- 株式会社BANDAI SPIRITS ロト・イノベーション事業部
一番くじ 企画開発担当
既確認生命体第31号 ズ・アラキ・ダ - 撮影:
- 曽我美芽
暗がりの中、不気味にライトが揺れるあのシーンがデフォルメされて立体化!
———今回の「一番くじ 仮面ライダージオウ feat.平成レジェンドライダー vol.2」では、ラストワン賞を第21話の印象的なシーンを再現したビルド ラビットタンクハザードフォームにさせていただきました。現物をお持ちしたのですが、まずはこちらを見ての率直な感想をお願いします。
上堀内第一印象は、めっちゃ可愛いなと(笑)。そして、まさか初登場シーンの暴走直前カットを選ばれるとは……。本当にいいんですか? ありがとうございます! という感じです。
———ハザードフォームのフィギュアは通常の賞にも入っているのですが、ラストワン賞にあたり特別な価値が欲しいという話になり、東映の監修担当の方と相談した結果、「あのシーンで印象的な天井からのライトを付けましょう」ということになりました。自分的には即断です! 原型師さんもかなりノッていただけたようで、こちらから注文したわけでもないのに、柱の部分にも工場っぽい細かいモールドまで入れてくれたんです。
上堀内撮影当時はこのライトまでフィギュア化されるなんて、思ってもいませんでした。ハザードフォームがどうしたら視聴者の印象に残るかなと考えた結果ですね。本打ち(脚本内容の打ち合わせ)では大森プロデューサー(大森敬仁)と共通認識的に、ある種の“怖さ”があってもいいんじゃないかという意見が出ました。だとしたらそれを映像としてどのように表現するのかということになりますよね。ハザードフォームを見せる際に一番カッコよく、怖くて不気味な空間とは何だ? と考えたところ、まずロケ地をどこにということよりも先に、ライトの下に佇むという発想が浮かんだんです。だったらバトルシーンは廃工場で撮ろう、となったのですが、前話って実は東都と北都の間の荒野的な場所で終わっているんですよ。だからオープニングを挟み、若干強引に工場へ移動させました(笑)。
———確かオープニングが終わったあと、なだれ込むように全員で工場の中に行くんですよね。
上堀内視聴者の中には「え?」と思う人もいたかもしれませんが、そこはちょっと強引に行かせていただきました。
———自分の中にある暴走する仮面ライダーというと、W ファングジョーカーやオーズ プトティラ コンボといった、吠えて暴れて敵を倒すというイメージだったのですが、ハザードフォームを見たとき、今までの暴走と全然違い冷徹な兵器的な怖さを感じました。
上堀内それは脚本を担当された武藤さん(武藤将吾)の作品テイストのひとつでもあると思うんですよ。兵器という言葉は劇中にも頻繁に出て来ますし、暴走中のハザードフォームは、脚本内でもいっさい台詞がなかった。そういった部分を加味しても、暴走=叫ぶではなく“無の恐怖”といった方向性にしたんです。僕自身、一番怖い人間というのは叫び狂ってる人よりも、完全に沈黙を貫いている人、そっちの方が怖いんです。でも、沈黙の演出表現って難しいんですよね。正味20分程度のTVドラマの中で、これをどこまできちんと見せられるのか……。それはプレッシャーでしたね。ただ、そこはスーツアクターの高岩さん(高岩成二)の芝居も相まって、うまくいったと思っています。「え? ここまでやる?」っていうくらい対象をボッコボコにするんですけど、あの高岩さんのアクションというか演技があったから、視聴者の方々にもハザードフォームが怖いフォームであるということが印象付けられたんじゃないでしょうか。
演者たちも理解していたハザードフォームの立ち位置
———高岩さんへの演出指示はどのような感じだったのでしょうか。
上堀内それこそ“マシンであってほしい”ということをお願いしました。現場で会った時に、「どういう方向性にする?」という話になり、僕からは「暴走だけどマシンがいい」と。ただ、高岩さんからも「やっぱりそうだよね」って。これくらいでしたね。あとは現場で実際に演じていただく際に、「もっとやっちゃっていいですよ」とか、「それ以上はちょっと危ないです」といった具合に、演技の度合いを詰めていったくらいです。
———アクション中でも息使いも含めて一切喋らないというアイデアは。
上堀内僕から大森さんに提案したところ、ご了承いただきました。そこに関しても共通認識だったのかなと思っています。ただ、犬飼君(桐生戦兎役の犬飼貴丈)はハザードフォームのアクション中の声をどうしたらいいんだろう……ってかなり悩んでいたようで、現場で僕のところに来て、「これ、声はどうすればいいんですか?」と聞かれたんです。アフレコをやる前に役者がそういう質問をすることってなかなかないんですけど、ああ、やっぱり聞きに来たか……と(笑)。だから「ハザードフォームに声は入れませんよ」と言ったら、犬飼君も「わかりました。ありがとうございます!」って。このハザードフォームの暴走に対して声を当てるというのが、想像がつかなかったようなんです。
———無い声は思いつかないということで、それはそれで正解ということですよね。
上堀内正直『ビルド』に関わっている方々は、ハザードフォームに関してどういったフォームなのか、割と理解できていたような気がします。
———ハザードフォームのデザインを見たときに、「これだ!」と感じたことはありましたか?
上堀内撮影はナイターでやろうということですね。黒の中に黒って結構映えるんですよ、もちろん真っ黒同士だと溶けちゃいますけど(笑)。だから第21話の倉庫のシーンとかも、意図して暗くしているんです。攻撃が当たったときの火花とかでうっすらと輪郭が見えるというのも、画的に映えますよね。見えない、見える、見えない、見えるという感じは多分、ホラーの常識なのかもしれないですけど、そういうのはどこか人間の脳内に恐怖の信号として刷り込まれているとも思っています。
———今回のパッケージの台紙も実はこだわって、工場をモチーフにしているんです。おっしゃっていた通り、黒に黒を合わせるというところも自分的には狙っていたんですが、社内からはフィギュアが黒いんだから台紙は明るくした方がいいという意見もありまして……。劇中再現なんだから絶対に工場じゃないとダメだし、黒に黒を重ねても絶対にフィギュアは映えます! と押し通しました。今、上堀内監督にそのことをおっしゃっていただき、自分は正しかったんだなと。
上堀内ぱっと見ると一体化しているようですけど「ハザードフォームってこうだよな、なんか闇の中にいるよね」という印象があります。このパッケージを見ていても、すごくしっくりきますね。
静かなる暴走ファイトはどのようにして作られたのか?
———ハザードフォームのアクションに関してもう少しお聞きしたいのですが、クローズチャージを一方的にボコボコにするところが僕はすごく好きで、『ビルド』のアクションシーンといえばここじゃないかなと思っている程で、何度も繰り返し観ています。このアクションの組み立ても、上堀内監督の意向が組まれているのでしょうか。
上堀内宮崎さん(アクション監督の宮崎剛)を含めたアクションチームにはとにかく手を休めないでボコボコにしたい、と僕は大枠だけお願いしました。あとは相手を叩きつけて跳ね上がったら、地面に着く前にまた一撃加えたいという話をしたので、クローズチャージにはワイヤーを装着し、動き自体はアクション部と操演部がつけてくれているんです。だからこのカットの練習やテストをしている時、僕は別のシーンを撮っていました。ちょっと空いたのでそっちを見に行ったら「めっちゃカッコいいな!」と。
———対クローズチャージがカッコいいのと、やっぱり最後に青ちゃん(スタッグハザードスマッシュ)をガッと掴んで、無言で蹴り込んで倒すというシーンが、兵器らしい印象を強めていて、本当にハザードフォームのアクションは、ほかとは全然違うなという印象を受けます。
上堀内最初が激しい動きだったので、最後は静の動きで見せた方が、よりハザードフォームが怖く見えるのではないかなと思っての演出です。僕はあまり計算ができるタイプじゃないので感覚でやってしまうんですが、絵を頭の中で作っていった時に、最後まで激しい動きだと逆に弱く見えてしまうのかな……と思ったんですよ。
———そういったカットは、その場で臨機応変に対処して作る感じなのでしょうか。
上堀内もちろん事前には考えてきますけど、ここでこうやってこう動くといった、細かいことはあまり考えていないです。だからこのクローズチャージとのバトルから、スタッグハザードスマッシュにトドメを刺す一連のシーンでいうと、ワイヤーを使った激しいアクションと、最後に稲妻が走ってからの蹴り込み、グリスが画面奥から走ってくるけど間に合わない。そこだけは頭の中にビジュアルを作っているんです。ただ、そのあいだに関しては事前にはあまり考えていないです。どういう流れになるのが一番美しいかなというのだけは、現場を見てから決めています。
———ここ! と決めているものはあるけど、他は自然に見えるような流れでということですね。
上堀内そうですね。この画を見せたいというか、これをこのように見せたいというワンカットを軸にして、周りを作っていく感じですかね。
——— だいたいイメージ通りにいくのでしょうか。
上堀内んー、半々……かな? やっぱり自分の脳内って勝手なんですよね。いらないものを勝手に排除するんですよ、で、実際に現場に行くと「あれ? これ、邪魔だな」とか、「あれ? こんなところにカメラは入れないや」といった、そういうのがいくらでもあるんです。そういったこともあり、半々ですね。でも、イメージ通りに出来た時は、本当に気持ちがいいんです!
———監督という仕事をする方としては、最高の瞬間なんでしょうね。
上堀内この最後の蹴りの絵面は、頭に描いた想像通りでした!
鬼才、上堀内監督の思い描く演出の着想ポイントとは?
——— 他に『ビルド』で「決まった!」というシーンはありますか。
上堀内うーん全体でいうと……。そうだ、第29話の最初で『第九』が掛かるオーケストラシーンはめっちゃ気持ちよかったですね。音楽に合わせてカットを割っている時は、吐きそうなほど大変でしたけどね。あれは画と音楽が完全にハマりました。
———その西都が侵攻する時のオーケストラだったり、ハザードフォームのライト、あとは夏映画『劇場版 仮面ライダービルド Be The One』の北九州の大規模ロケ。ああいった上堀内監督ならではの独特な演出というのは、どのようにして着想を得ているのでしょうか。
上堀内TVシリーズであれば話数や話の内容、映画だったらひとつの作品として、何を目的とするかというところを重視しています。例えば今お話しした第29話だと、もともとオーケストラではなく、台本では鼻歌だったのをオーケストラにまで膨らませてもらったんです。なぜかというと、第29話は4月の1発目の回で、大森さんから「ここからが『ビルド』第3章。新章スタートになります」と言われたのと、さらに3話一括りとしてきちんとオチが付くエピソードとしたいともリクエストがあったからです。要はそこから『ビルド』を観始めたとしても、スムーズに入り込めるようにしたいということですね。だったら冒頭は『ビルド』と思われなくてもいいやというくらいの考えで“とにかく目を惹こう!”という思いから、あのオーケストラが生まれました。『ビルド』を続けて観ている人でも、「お、なんかいつもと違う!?」と思ってくれたでしょうしね。ハザードのライトは“怖さ”という漠然とした言葉の具現化のひとつです。怖い=暗い。でも、真っ暗な中でただ佇んでいて、ライトで照らすだけだと面白くないなというのもあり、だったらライトを揺らすとより怖く見えるだろうと。そういう感じで目的をどんどん具体案に持っていっているんです。北九州のロケも同じですね。『ビルド』の単独の映画ということで、世界観を壮大に見せたいという目的がありました。TVシリーズだとやれることが限られてしまうので、ある意味フラストレーションもあったのかもしれません。日本というか、下手したら世界規模に発展するような壮大な物語なのに、絵的には少し足りない。それをどうにかできないかなということから北九州でのロケを思いつき、その裏には仮面ライダーという作品が、いつもと違うことをやっているっていう見方もして欲しかったというのもあります。それだけで『ビルド』を観たことがないという人も、ちょっとこの映画は観てみようかな? という気持ちになってくれるんじゃないかなと。
人の心に残る画を作りたいという思いは、たしかに伝わっている!
———独特な絵作りというのも上堀内監督の特徴ではないでしょうか。『ビルド』の東都VS北都代表戦のシチュエーションや絵画の枠を砂浜に設置した海岸でのバトルシーン、『エグゼイド』で仮面ライダークロノス初登場時の巨大な時計。いつもと違うというか、仮面ライダーの中で新鮮な画を見せたいという思いを強く感じます。
上堀内いつものところでいつものことをするというのが、ただ嫌いなだけなんです。だったら何か手を加えたいと思ってしまいます。それで違う画に見えてくれたのなら嬉しいですね。特撮作品の監督の中では僕は年齢も含めて一番若手なので、多分、何か爪痕を残そうとしているんだと思います。だから今回はちょっとやりすぎたな……って後から自分で観て思ったりもするんですよ。僕的には人の心に残るものを作ろうとしているだけなんですけどね。でも、それって良し悪しだと思っていて、連続ドラマ、特に仮面ライダーやスーパー戦隊だと、放送期間が1年間……約50話あるから、その中でいろんな回があってもいいかなと思うんです。じゃあ、これが例えばワンクールで完結する作品だったりすると、いきなり突拍子も無い演出の回が来たりしたら、すごく物語のペースを乱すんじゃないでしょうか。いろいろと試せるというのは、1年という長いスパンが助けてくれている部分は大きい。やっぱり「なんかこの回だけ違うな……」と思われてもいいから、極論ですけど、人の心に残るものを作りたいという思いなのかな? だからいろんなことをやっちゃうんだと思います。それが許されているかどうかはわからないですけど……。ただでさえ自分が担当した回を観返してみて「めっちゃ浮いてんな!」と思うこともあるわけですから(笑)。
———その上堀内監督の「心に残る」というこだわりの結果、僕の心に刻み込まれて、このフィギュアが立体化させていただいたので。
上堀内僕は多分その塩梅がまだまだコントロールできない人間だと思うので、監督としてその部分が成長していければいいなと思っています。ただ、難しいですよね。ずっと普通のを撮っていてもつまらないし、かといってやりすぎてもお腹いっぱいになるし……。難しいです、はい。あまり気負いすぎてというのもあるのですが、僕は毎回、気負っているんじゃないかな、ということもあるんです。どちらかというと、そっちの方が大きいのかもしれない。撮っていて自分で思いましたもん。いつも力が入っているな……と。
———『ビルド』で、なんとなく自分を客観的に見れる感じになったのでしょうか。
上堀内一瞬、見られましたね。今、スーパー戦隊シリーズの『騎士竜戦隊リュウソウジャー』を撮っています(上堀内監督はメイン監督を担当)けど、いまだにスーパー戦隊ってなんだろう? と思いながら撮っているし、パイロット版(演出の基準となる初期の回)ってなんだろうと想像がつかない中でやっています。ただ、撮っていて楽しいですけど(笑)。
視聴者の意見はあって当たり前。それが新たな考えに繋がることも
———ファンの反響は気になりますか? Webなどで意見を見たりなどは。
上堀内そういうのは僕自身は怖くて見られない部分はあります。ただ、映画の初日とかは気になりますので、そういう時はプロデューサーとかと一緒に見ます。評価されると嬉しい一方、もちろん厳しいコメントもあるので怖いんですが、そこはあまり気にしないようにしています。だって、100回いいことを言われても、1、2回悪いことを言われたらそっちの方が気になるじゃないですか。なので、薄目を開けて見るような……(笑)。
———上堀内監督を検索すると、関連キーワードで神と出てくることはご存知ですか?
上堀内知ってます。大森さんが茶化して言うんですよ。「あ、出た、神」って(笑)。ある意味、嬉しい部分もあるけど恥ずかしいし、それを真に受けてはいけないのかなという部分もあります。
———そこは慢心しないようにという感じでしょうか。
上堀内そういった部分もありますね。みなさんが見たいものを提供できたうえでの結果ではあるとは思いますけど、やっぱり反響を気にしすぎると、自分がやりたいことができなくなる気もするんですよ。だから、あんまり気にしちゃダメなんだろうなと。どれだけやっても面白いと言う人もいれば、面白くないと言う人もいるわけだから、まずは自分が好きなものをということを意識することを忘れないためにも、という感じですね。
———ご意見は自由に書いてくださってもいいですよ、という感じはあるのですね。
上堀内それは別に全然! 正直な意見は欲しいですね。それこそ映画初日のご意見とか拝見させていただいてるときに、「俺はこう思う」というのをちゃんと書いてくださってて、それが面白くて、参考になることも多いんですよ。「そういう見方もあるんだね」とか思うこともあり、やっぱり仮面ライダーのファンの方ってすごく真面目なんですよね、いい意味で。僕らは映画だろうとTVシリーズだろうと、作り手側、発信する側じゃないですか。そういった人たちって、観てくれた側の方々の意見というのは、あって当たり前のことなんじゃないかと思っています。
上堀内監督をひとつ前に進めた『仮面ライダービルド』という作品
——— 今、振り返ってみて、ご自身の中で『ビルド』ってどういう作品だったのでしょうか。
上堀内漠然とした言い方をすると、僕が調子に乗った作品でもあるし、そのおかげで自分っていうのを少しだけわかった作品だったかもしれないです。ちょっと悪い言い方かもしれないですけどね。
———色々試せたとかそういうことでしょうか。
上堀内試すんですけど、さっきも言いましたが、やりすぎた部分もあるんですよ。『エグゼイド』のときはやり始めたばっかりだから、やりすぎかどうかもわからない状態だったんですけど、TVシリーズ9本に加えて映画もやらせてもらったので、ふと「あっ……」って。振り返らせてくれるというか。ここまでっていうのはもしかしたら視聴者は求めていないかもしれない。自分のエゴなのかもしれないとかってのも含めて……。いや、答えはわからないですよ(笑)。けど、いろいろと行ったり来たりはできたのかなという気はします。それが終わって『ジオウ』をやらせていただき、今は『リュウソウジャー』に入っています。すごく糧になったというか、このままあまり考えずにやっていたら、僕はただ本当に自分の好きなことだけをやっていて、作品というものを本当に考えられているか、愛せているのかというと……正直、後になって後悔していたかもしれないと思うくらい、『ビルド』の1年でいろんなことを経験できたんじゃないでしょうか。やっぱり自分を省みるっていうのは大事なんだなと思いました。でも、今後それって多分、監督という業種をやっている限り延々続くんだろうなと思っているんですよ。でも、ある意味、その第一歩になったシリーズなのかなという気がします。
———作品として見られたということですね。
上堀内終わってみればですけどね。やっている最中は一生懸命すぎて、その瞬間瞬間には思えないんだけど。顧みるといっぱいやらかしているし、いっぱいしめしめと思えたこともできた。これからもその行ったり来たりをしていくのかなと思います。その上下の幅を上手に変えていければいいなと。
———自分が監督としてこういう風に人生を歩んでいくんだろうなというのが見えた大きな1年とでもいいますか。
上堀内指針にはなったと思うけど、自分の先は全然見えないです。でも、監督をやっている人でそれが見えてる人はいないと思うんだけどなあ。正直、どんな監督像になるかもわからないですね。けど、顧みることは覚えさせてくれたのかな。
仮面ライダーなら何でもできる!これからの上堀内監督にも期待!
———仮面ライダーシリーズで今後やってみたいことはありますか。
上堀内今、やり残したと思うことは別にないですけど、仮面ライダーってなんでもできると思うんですよね。根底は変わらないけど、仮面ライダーというものをどう存在させるかということの観点でいくと、なんでもできる気がして。だから多分ここまで続いていて、いろんなシリーズがあると思うんです。海外でも撮れるだろうし、なんでもできる気がします。北九州のロケもそのひとつのような気がします。「あ、ライダーもこういう大規模ロケできるじゃん!」と……(笑)。そういう意味でなんでもできるだろうし、いろんな人に影響を与えられるものだから、次に何を思いつくのかなというのが、楽しみなところですね。
———最後にファンの皆様にひと言お願いします。
上堀内「なんでもできる!」じゃないですけど、こういった売り切れになる人気の玩具やフィギュアというのは今、日本でも少ないと思うんです。その中に自分が演出した部分を取り入れていただき、ファンの皆さんが欲しいなと思っていただけるんだったら、すごくありがたいと思っています。でも、やっぱりそういった方々がいらっしゃるから、僕らはやっていけるんです。「ライダーが好き!」「特撮が好き!」「『ビルド』が好き!」、そう言ってくれる人がいないと特撮番組は成り立ちません。そういう意味でもやっぱりファンの人たち含めて、この作品というか仮面ライダーシリーズが作られていくと思いますので、これからも一緒に歩んでいってください!
上堀内佳寿也
PROFILE
1986年10月21日生まれ。鹿児島県出身。鹿児島県のテレビ局で情報番組などのディレクターを務めていたが、映画やドラマの制作をやるために上京。『仮面ライダーキバ』以降、数々の作品で助監督として携わり、2016年“東映特撮You Tube Official”『仮面ライダーゴースト』特別先行動画で初監督を努め、『仮面ライダーエグゼイド』でTVシリーズ監督としてデビュー。続く『仮面ライダービルド』では全9本に加え、劇場版2作品の監督を担当。2019年、スーパー戦隊シリーズ最新作『騎士竜戦隊リュウソウジャー』のメイン監督として抜擢。これからのさらなる活躍に期待が掛けられている。