Kamen Rider BLACK SUN

仮面ライダーBLACK SUN
スペシャルインタビュー
白石和彌 × 樋口真嗣 × 田口清隆 後篇

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後篇では、三人に「仮面ライダーBLACK」放送当時の思い出とともに、シャドームーンやビルゲニアなどキャラクターたちの魅力を存分に語っていただいた。さらに本作をどのような作品にしていきたいか、それぞれの思いに迫った。

インタビュー《前篇》を読まれていない方はこちら

大きくなるファンの期待にどう応えるか。

2021年4月3日に『仮面ライダーBLACK SUN』の制作が発表されましたが、ファンの反応についてはどのように感じましたか。

田口樋口さんが関わることは知ってましたけど、そのときはまだオファーが来てなかったので、盛り上がってるな! って。

白石僕で言うと、今まで携わった作品の中でも反響が一番大きかったですね。単純に〝生誕50周年〟って言いますけど、今も子どもたちに向けて毎週作品をつくっている方々がいる。それってすごいことですからね。そんなビッグコンテンツの中に自分も入って大丈夫なのだろうか……発表されてプレッシャーが押し寄せてきましたね。SNSでたくさんの呟きを目にしましたが、そういった方々に僕自身も誇れるような作品をお届けしないといけないな、と感じました。

樋口僕はまだスタッフとしては紹介されていませんし、他人ごとっぽく見ていました。でも同日、白倉さんが『シン・仮面ライダー』を発表したというのが僕の中で意外でした。「白倉さん、そっちなんだ!」って(笑)。 って

白石今回、樋口さんと田口さんがスタッフとして参加することがようやく発表されるので、このプレッシャーが少しでも軽減できるのかな(笑)。

〝BLACK(黒)〟を背負うという白石監督の言葉に期待感が高まる。

『仮面ライダーBLACK』について、放送当時の印象や、今、改めて観て変わった印象などあればお願いします。

白石監督の写真

白石放送当時は1987年でしたっけ。僕は中学生だったのですが、あまり記憶がないんですよ。『仮面ライダーBLACK SUN』のお話をいただき改めて観たのですが、ビターな雰囲気の作品でしたね。石森章太郎先生の世界観といいますか、物語から悲しみを強く感じました。

 BLACKとシャドームーンというふたりの兄弟、宿命のライバルがいるというところに人間味があり、それは暗に主人公がふたり存在するということですよね。世界観も単純に悪の組織がいるということではなく、ゴルゴムの事情も複雑で、それは『仮面ライダーBLACK SUN』でも面白い要素として盛り込めるのではないかと思いました。

 エンディングもハッピーエンドにするのか、それとも『仮面ライダーBLACK』のビターな感じを残すか、そこもちょっと今も悩んでるところはあるんですけど、なにせタイトルに〝BLACK(黒)〟が入っているわけですから、そこはきちんと背負っていきたいですね。

樋口先ほども話しましたが、ナイターの印象がすごい強いのと、デジタル合成がない時代での見事なVFX合成の印象が強いです。夜の新宿の街を三神官がバッ! と飛んでたりとか。ああいうのを観ると、今ならいろんな合成ができるんだろうなって。それまでの「仮面ライダー」シリーズとは制作のスタイルが変わっていましたので、それもどう取り入れていくかは考えています。それまでの「仮面ライダー」シリーズと「メタルヒーロー」シリーズの世界観の橋渡し的なところがある作品とも思えましたので、今観ると、いい感じのミッシングリング的な作品だなって。

 白石さんのつくるリアリティのある世界観の中に、『仮面ライダーBLACK』をどう取り入れるか。もちろんそのままではなく、さらに飛躍させたものをどうやってうまく取り込むのか……、ものすごく対称的なテーマのような気がしますね。でもそこはきちんとやらなければならない。なぜかというと、そこに文脈がないとシャドームーンにたどり着かないから。シャドームーンが出るのは言っちゃっていいんでしたっけ? まぁ出ないワケがないんだけど(笑)。

 まずは仮面ライダーBLACKの在りようというのをクリアしないと、シャドームーンにはたどり着かない気がしたんですよね。逆に言うと、仮面ライダーBLACKがある程度形になった時点で、ようやく大手を振ってみんなの大好きなシャドームーンが登場する。

 かっこよさという面ではやっぱりシャドームーンのほうがはっきりしていますよね。こういうキャラクターはみんなが大好きっていう。そこに対してはすごくやりやすいというか、明確な感じがします。

田口僕は『仮面ライダーBLACK』の放送中は7歳だったので直撃した世代、確実に観ていたんですけど、子どものころ過ぎてちゃんとは覚えていないんですよ。ただ、ゴルゴム三神官がものすごく気持ち悪かったというイメージと、毎週、怪人の造形物がいい意味で気持ち悪くて好きでした。あの時代って確かハリウッドのSFXが隆盛期だったような気がしていて、特殊造形を丁寧に仕上げていた印象があったなぁと。お話をいただいて観直したらやっぱりそうで、怪人のスーツがすごいかっこいいつくりなんですよ。あれはすごくいいなと思っていて、今回も特撮監督という立場なので、造形物はちゃんとかっこよく仕上げたいと、そこはきちんと見ないといけない大事なポイントですね。

シャドームーンの話題で会話が弾むなか、樋口氏が気になるキャラクターだと語るのは「剣聖ビルゲニア」。『BLACK SUN』に登場するのだろうか!?

『仮面ライダーBLACK』で思い出に残ってるエピソードやキャラクターなどはありますか。

白石シャドームーンファンは、本当に多いんだなっていうのはすごく感じますよね。映画『孤狼の血 LEVEL2』(2021年)のキャンペーンをやっていて、そこで取材を受けたあと、ライターさんから「『仮面ライダーBLACK SUN』楽しみにしています。シャドームーンが好きなんです」という言葉を掛けていただくことが何度もありました。悲劇的な物語、序盤から数えると登場自体もそれほど多くはない、そういうのを含めた〝儚さ〟に魅力を感じるんでしょうね。

 僕が特に好きなエピソードはクジラ怪人が関わる話ですね。なぜか仮面ライダーBLACKとのバディものになるというのがたまらなく好きなんですよ(笑)。

田口見てた記憶が曖昧なわりには、仮面ライダーBLACK RXとシャドームーンの後頭部を押すと目が光るSDのフィギュアを持っているんですよ。それをすごく気に入っていて、部屋の一番目立つ場所に飾ってたんです。明らかに子どものころに焚き付けられたんでしょうけど、シャドームーンには惹きつける何かがありますよね。ゴジラに対するメカゴジラな感じとでも言うか……。あの、緑に光るところも好きになってしまいますよね。今でも実家に戻ると、そのシャドームーンのフィギュアは飾ってあります。

樋口僕は今回、改めてひと通り観てみて、心に刺さってしまったのがビルゲニアなんですよね。ひとりだけ世界観が違うというか、なんでビルゲニアはビルゲニアなんだろう? みたいな。ゴルゴムの怪人たちはある意味で生物的なリアリティを持つなか、彼だけがよくわからない。物語の中での立ち回り方、最初はすごい違和感を覚えるんですけど、段々と刺さってくるんですよね。三神官とも折り合いが悪いし、最期も可哀想というか、哀愁を感じさせます。ビルゲニアの存在感を是非、再発させてあげたい。そういう夢もあります。

鼎談のようす

今の社会問題にも通じるエンタテインメント作品に。

『仮面ライダーBLACK SUN』をどのような作品にしていきたいですか。

白石エンタテインメントとして面白い作品にしたいんですけども、物語的には時代も含めて少し重層的な構造にしています。

 ヒーロー作品でありながら近代史のなかでは闇の中に消えていくようなことだったり、皆が考えなければいけないけど、それができていない部分。まったくそのまま世相を反映しているわけではないですが、それを感じられるようなつくりにはなっていますので、エンタテインメントでありながら日本を含めた今の社会問題を考えさせられる作品になればいいなと思って一生懸命つくっています。

樋口台本の面白さに関しては、今までにないものになっています。これだけ本格的に東映作品に携わらせていただくのは初めてなんですが、この作品ができるのは東映しかないでしょうね。東映ってやっぱりそういう社会の欠けてる部分だったり、なんとかしなければいけない問題にちゃんと向き合った作品をつくってたんです。最初の『仮面ライダー』のショッカーに関してもただの悪というわけではなく、歴史的背景を巧みに取り入れた上で存在させているので、そこにも物語の重さを感じさせるんですよ。今の社会問題に深く切り込んでいくような形で白石さんの「仮面ライダー」作品ができあがるというのも、すごくドキドキしますね。

田口台本を読んだらすごい世界観なわけですよ。僕は特撮監督という立場として、VFXを含めた描写が下手くそだと世界観がぶち壊しになってしまうので、これって意外と責任重大だぞ……って。頑張らせていただきます!

田口氏の写真

『仮面ライダーBLACK SUN』制作にあたり、クラウドファンディングを行うことになりましたが、出資者へのリターンのアイデアなどはありますか。

白石50年も続いている「仮面ライダー」は、ファンの方々が支えてくれています。クラウドファンディングって、単純に製作費を集めるということだけではなく、製作に参加してもらえるシステムでもありますので、是非一緒に作品をつくり上げてほしいなって感覚です。あと、『仮面ライダーBLACK SUN』はヒーローの話だけでなく、怪人たちや人間たちの群像劇でもあるので、それぞれ推しのキャラクターができると思うんですよ。

 そういったキャラクターたちをクラウドファンディングに絡ませて、何かファンに喜んでもらえることが出来るといいですね。

ファンに向けてメッセージをお願いします。

樋口白石監督が、ついに、山が動きました。今まで社会の闇をえぐっていた白石さんの牙が、ついにヒーローや怪人、我々の大好きな特撮作品に向けられ、今まさにその牙を研いでいます。いったいどうなるんでしょうか? 僕も楽しみです。この瞬間に立ち会えたことが我々制作陣の最高の喜びになり、最高の誇りになる。そんな作品になることを今からワクワクしています。ぜひ、楽しみにしていてください。

田口毎年、「仮面ライダー」は新作が作られていて、出し尽くしたであろうと思うくらいいろいろなパターンがあるんですけど、『仮面ライダーBLACK SUN』は、その殻を破ったところでつくられている作品ですので、これは今まで観たことがないものができあがりそうです。楽しみにお待ちください。

白石『仮面ライダーBLACK SUN』、大人が観られる、でも、子どもも観られる、エンタテインメント性がある作品にするべく、一生懸命、脳みそをフル回転させまくってる最中ですので、ぜひぜひ、楽しみに待っていてください。必ず、面白いものにします! 応援よろしくお願いします!

鼎談のようす

今回は約1時間半にも及ぶ三人のインタビューから一部を抜粋して紹介した。今回掲載しきれなかった三人のインタビューの全貌が書かれた『仮面ライダーBLACK SUN プロダクションノート』が手に入るクラウドファンディングも実施中。詳しくはこちらから。

クラウドファンディング 「仮面ライダーBLACK SUN」応援プロジェクト」